
日常で使う印鑑には、実印、銀行印、認印の3つに大きく分けられます。
その中でも重要とされるのが実印です。
実印は「自分の意思を表す担保」として大きな効力を持ち、重要な契約を結ぶ時に使われる印鑑です。
ところで、夫婦が同じ印鑑の実印を共有してもいいのでしょうか?1本の実印を夫婦で使い回す…何となく危ないようにも見えますね。
そこでこの記事は、夫婦で同じ実印を共有することの問題点について、詳しく紹介します。
実印を夫婦で兼用すると生じるデメリットとは
重要書類などに使われることの多い実印ですが、これは住民登録のある市町村役場に登録(印鑑登録)した印鑑のことです。あらかじめ実印の印影を登録しておき、その印鑑の持ち主を示す証明書(印鑑登録証明書)を発行することで、契約書などに押した実印が「自分本人のもので間違いない」ことを証明できます。
なお、実印として登録できる印鑑には、印面のサイズなど様々な条件があり、自治体によって規定(印鑑条例)されています。
そんな重要な実印を、夫婦で共有しても大丈夫なのでしょうか?
実は、実印を夫婦で共有しても法的には問題ありません。例えば、夫が印鑑登録した実印を妻が使用することは違法ではないのです。
このように、どちらかの実印を共有することは可能ですが、いくつかのデメリットもあります。

・デメリット1
夫婦別々の実印が必要になるとき、対応できない
住宅ローンをペアローンで組むなど、手続き上、夫婦で別々の実印を押すケースがあります。この場合、夫婦で実印を共有していると不動産を購入できません。他にも自動車の名義変更や保証人契約など、夫と妻いずれかの名義で契約する際には、それぞれの実印と印鑑証明書が必要となります。
・デメリット2
紛失と不正使用のリスクが高まる
夫婦で1本の実印を共有していると、使用頻度が上がるため紛失のリスクが高まります。実印の保管先を決めておいても、必要な場面で使ったまま置きっぱなしにして、そのまま失くしてしまうというケースは意外にあります。また、万が一、紛失して他人に悪用されると、夫婦2人の名義で不動産などの契約ができてしまいます。夫婦で実印を共有することは、実質的に2人分の効力を持つことになり、不正使用のリスクも高まります。
・デメリット3
重要な契約を一方的に結べてしまう
夫婦で実印を共有すると、夫婦間で承諾を得ずに勝手に実印を使用できるデメリットがあります。例えば、相手側の名義で勝手に借り入れをおこなうこともできてしまいます。夫婦間で相談もなく実印を使用することはないと思いますが、重要な契約を勝手に結べてしまう状態は、お互いを守るために避けるべきです。
以上のようなデメリットが考えられるため、1本の実印を夫婦で共有することはお勧めできません。
自治体の印鑑条例では「印鑑登録できるのは1人につき1つまで」と規定されています。
つまり、夫婦が1つの印鑑を実印として印鑑登録することはできません。夫婦で異なる印鑑を用意し、それぞれ印鑑登録を済ませて、各自で実印を持っておくことが大切です。
夫婦が別々の実印を持つには印鑑登録が必要

実印用の印鑑は専門店で作ることができますが、気を付けたいのが、買っただけでは実印としての効力はないということ。お住まいのある自治体に印鑑登録することで、初めて実印として使うことができます。
登録できる印鑑の条件は地域によって異なります。国の法律ではなく地方自治体の条例に基づいているからです。例えば同じ内容の印鑑でも、「A市では登録できてB市では登録できない」ということもあります。
一般的に登録できる印鑑は次のとおりです。
〈登録できる印鑑の材質〉
・ゴム印やイモ判など変形しやすい素材でないもの
・大量生産された既製の認印(三文判)でないもの
大量生産された既製の認印は同型印(同じ型で彫刻した印鑑のこと)が存在する可能性があるため、実印に不向きとされています。またプラスチック製印鑑の場合、自治体によって登録の可否が分かれます。
印鑑登録用にプラスチック製の印鑑を購入する時は、事前にお住まいの自治体を訪ねて確認しておくと安心です。
〈登録できる印影のサイズ〉
ほとんどの自治体が「一辺が8mm以上で25mm以内の正方形に収まるもの」としています。
〈登録できる印鑑の長さ〉
印鑑の長さは「特に規定はない」とする自治体が多いです。ただし、中には「3cm以下や1cm未満の印鑑は不可」としているところも。「印鑑が短すぎると押しにくく、印影が歪むことがあるから」というのが理由のようです。現在、専門店で販売されている印鑑の長さは60mmが大半なので登録に引っかかる心配は少ないですが、念のため自治体に確認しておきましょう。
印鑑登録は、本人による申請と代理人による申請が可能です。郵送での手続きはできません。
申請に必要なものは、
・登録する印鑑
・本人確認書類(マイナンバーカード、日本国発行のパスポート、運転免許証、在留カードなど)
・印鑑登録申請書(自治体の窓口に備え付けの書類)
本人確認書類を提出するとき、マイナンバーカードや運転免許証などの写真付き身分証明書(官公署が発行したもの)だと、即日で印鑑登録が完了できます。それ以外の本人確認書類だと、登録に日数がかかります。急ぎで印鑑登録を済ませたい方は気を付けましょう。
夫婦が銀行印を共有するのは危険?
では先述した実印のように、「同じ銀行印を夫婦で共有する」ことはいいのでしょうか?
一見便利に思えるかもしれませんが、こちらも実印と同様、共有は避けるべきです。

使う頻度が増えるため盗難や紛失のリスクが高まります。誰かに銀行印を盗まれ悪用されると、夫婦それぞれの口座から不正にお金が引き出されてしまいます。
また、そうなった場合、悪用されるのを防ぐために銀行印を届け出ている金融機関に利用停止の手続きをしなければなりません。1本の銀行印を共有することで、かえって手間と労力がかかってしまうのです。
こうしたデメリットを避けるため、銀行印も夫婦別々に用意するのが基本です。
実印と銀行印は1人1本が原則。1本の実印または銀行印を共有しないよう、夫婦で1本ずつ実印と銀行印を用意しておきましょう。
夫婦の実印と銀行印をお得に購入したいなら、専門店「印鑑の匠ドットコム」がおすすめです。「実印と銀行印」の2本セットのプランだと、単品よりもお得に作ることができます。柘(つげ)や黒水牛、チタンなど、材質も豊富にそろっています。
夫婦の実印は絆が深まるペアがおすすめ
ここまで、夫婦で同じ実印を共有することの問題点について紹介しました。
実印を夫婦で共有しても法的には問題ありませんが、
・夫婦で別々の実印を押す場合、対応できない
・紛失と不正使用のリスクが高まる
・重要な契約を一方的に結べてしまう
などのデメリットがあるため、各自で実印を持っておくことが大切です。
実印をそれぞれ分けることで、自分好みのデザインにできる楽しみが生まれるでしょう。
また、最近は夫婦おそろいのペア印鑑も人気があります。
材質やデザイン、ケースもおそろいにすれば、夫婦としての絆がより深まります。これからの人生をともに歩むという意味で、象徴的なアイテムになりますね。まだ実印を持っていないという方は、夫婦おそろいの実印を選んでみてください。

