実印に必要なのは苗字(姓)だけ?名だけ?それとも両方?

家を建てる、車を購入するなどの手続きに欠かせないのが実印です。重要な契約を結ぶ時に使われる、信頼性の高い印鑑として知られています。

ところで、実印は印面にフルネーム(氏名)が入ったものをよく見かけますが、これって何か決まりがあるのでしょうか? また、名前だけ、苗字(姓)だけでも実印を作ることはできるのでしょうか?

そこでこの記事は、実印の印面が苗字(姓)・名・フルネームの中で、どれが適しているのかを解説します。実印用のはんこを購入する際に、ぜひ参考にしてください。

苗字と名前の一部を組み合わせても登録できる

そもそも、印鑑にはどんな役割があるのでしょうか? それは「自分の意思を表す担保」です。書類などに印鑑を捺すことで、「この書類に書かれてある契約内容を承認します」と、自分の意思をはっきりと示すことができるわけです。言ってみれば、印鑑とは自分の分身のような存在ですね。

実印は、その「自分の意思を表す担保」として大きな効力を持っています。自治体にあらかじめ印影を登録し、印鑑登録証明書を交付することで、契約書などに捺した印鑑が自分本人のもので間違いないことを証明できます。

重要な契約を結ぶ時に使われる「分身」なので、印面は戸籍に則った氏名(フルネーム)にするのがいいとされています。

ただし、「実印はフルネームで作らなければいけない」といった決まりはありません。苗字(姓)のみや名のみで作ることも可能です。さらに、

・苗字に名前の一部を付けたもの

・苗字と名前の頭文字同士を組み合わせたもの

…でも登録できます。例えば戸籍名が「山田太郎」の場合、「山田太郎」「山田」「太郎」「山田太」「山太」の5種類が登録可能です。ただし、氏名をひらがなやカタカナに変更したものは登録できない場合が多いので、気を付けましょう。

※印鑑登録は個人の場合、地方自治体の条例に基づいているため、細かい規定は自治体によって異なります。

実印はフルネームがおすすめ。その理由は?

このように実印はフルネーム、苗字、名、それらの一部を組み合わせたものでも作ることができますが、偽造防止のため「フルネーム」の印面にするのが一般的です。

また、女性の場合は、あえて「下の名前だけ」にするという人もいます。フルネームで実印を作ると、例えば結婚や離婚で姓が替わった時、そのまま実印として使うことができないからです。

たしかに下の名前のみで実印を作れば、もしもの時の作り直しのリスク回避になりますが、偽造防止の観点で見ると十分にセキュリティが確保されているとは言えないでしょう。

実印は重要な契約を結ぶ時に用いられるアイテムです。「自分の意思をしっかりと証明できる」、「偽造されないように印面を複雑にする」という条件を満たすには、できるだけフルネームで作るのがおすすめです。

印面に彫る書体の種類は一般的に6~7書体あり、それぞれの文字には特徴があります。「このハンコにこの書体は使えない」などという決まりはありませんが、実印の場合、篆書体が主流です。

篆書体とは、秦の時代、始皇帝の大臣李斯の手によって統一された歴史のある文字のこと。篆書体が実印用の印鑑によく使われている理由として、「一般の人が読みにくく偽造しにくい」という特性が買われていると言われています。たしかに楷書体や行書体と比べると字形が異なり、まるで暗号のようですね。

実印を作る時は「フルネームで篆書体」と覚えておきましょう。

※印面に使われる書体は、篆書体の他、隷書体・行書体・楷書体・印相体・古印体などがあります。

実印を作る際は、最寄りの市町村役場に相談を

ここまで、実印の印面が苗字(姓)、名、フルネームの中で、どれが適しているのかについて紹介しました。

印鑑を実印として使う場合、戸籍に記載された苗字・名・フルネームのいずれでも登録できます。

また苗字や名の一部を組み合わせたものでも登録可能で、柔軟に対応してくれるようですね。

ただし、実印は家の購入など重要な契約を結ぶ際に使われる、大切な印鑑です。そのため、「本人の意思を示すことができ、かつ印面が複雑で偽造されにくい」ものとして、フルネームで印面を作るのがおすすめです。印面の書体は篆書体にしておくと、より安全です。

また、実印を登録する際は、

・同一世帯で同じ印鑑は登録できない。

・登録できる印は1人1点に限定する。

・ゴム印など印面が柔軟なもので、押し方によって印影に相違が生ずるものは登録できない。また摩滅しやすい材質のものも登録できない。

…など様々な決まりがあります。他にも文字の書体については「判読できない文字は不可」としている自治体が多いです。細かい規定は各自治体によって異なるので、実印を作る際は、お住まいの近くにある市町村役場に相談しましょう