オフィスなど回覧文書に押す「見ました」印や宅配便の受け取り確認用など、「ネーム印」は様々な場面で使われています。
このネーム印に使用するインクの色ですが、朱色と赤色のどちらがいいのでしょうか? 回覧文書などに捺したとき、どちらの色がスタンプとして適しているのか、気になる方も多いでしょう。
そこでこの記事は、ネーム印のインクの色について、朱色と赤色のどちらが適性なのか紹介します。
ネーム印とはどんなもの? 実印に使えるの?
本題に入る前に、ネーム印の特徴について説明しましょう。
ネーム印とは、自分自身の名前が印面になった丸い認印サイズのスタンプのことです。
印面が液体を浸透するスポンジ状の素材でできており、ホルダー内(持ち手部分)のタンク(または印面そのもの)にインクを貯留する構造を持ち、スタンプ台を使わずに連続で何回も捺すことができます。スタンプメーカーのシヤチハタが1965年に発売したことから、世間では「シヤチハタ」の呼び方が定着しています。
ネーム印は、回覧や宅配便の受け取りのチェック印など認印の代わりとして使用できます。インク内蔵型なので、わざわざスタンプ台を持ち歩く必要がなく、外出先でも手軽に捺せます。また、ビジネス用途では看護や物流の現場でも人気。首からネーム印をぶら下げている看護師や宅配ドライバーを見かけたことがある、という人もいるかもしれませんね。
認印の代わりに使えるので便利ですが、一方で銀行印や実印としては不向きです。例えば実印の登録(印鑑登録)に関しては、ほとんどの自治体が「ゴム印・スタンプ印または変形しやすい材質は不可」と定めています。ネーム印は便利ですが、印鑑の代わりとしては使えないということを覚えておきましょう。
ネーム印には既製品と別製品がある
ネーム印のインクは、朱色と赤色どちらを使用しても問題ありませんが、朱色のインクが一般的です。これは印鑑の朱肉に似せて作られた色で、認印の代わりに書類などに捺したとき、赤色よりもなじみがあります。
一方、赤色のインクは、ネーム印よりも住所印や日付印、氏名印、伝票に捺す科目印などのスタンプに使うのが一般的です。
実はネーム印には既製品と別製品の2種類があり、朱色のインクのネーム印は既製品、赤色のインクのネーム印は別製品扱いになっていることがほとんどです。
既製品とは、主に事務用などで使う定番のスタンプを大量生産したものです。安価で、ショップに在庫さえあればすぐに手に入ります。ただしインクの色や書体、大きさなどが限られます。
別製品とは印面をオーダーメイドで作るスタンプの総称。インクの色や印面の内容、素材、大きさなどを自由に注文することができますが、既製品に比べて割高になります。
既製品のネーム印の場合、ほとんどのメーカーが「インク色が朱色のみ」としており、赤インクのネーム印を購入する時は、別製品扱いとなります。既製品よりも価格が高く納期もかかるので、「赤インクのネーム印を注文したい」という人は少ないかもしれませんね。
ネーム印のインク補充方法は?
ネーム印を長く使っていると、徐々にインクが薄くなったりかすれてきますが、「もう使えない」とネーム印ごとポイっと捨てていませんか? 実は、ネーム印はインクの補充ができるように設計されています。
インクが薄くなったりかすれてきたら、最初にまず、インクが十分に足りているかを確認しましょう。印面を下にして、半日ほど使わずに立てておきます。それでもかすれているようなら、インク補充のサインです。
ネーム印に付属している説明書を参考に、専用インクやカートリッジで補充します。この時、他の製品のインクを間違えて入れると、変色したり印面が固まったり、膨らんだりして使えなくなることもあるので要注意。必ず専用のインクを使うようにしましょう。
また同じメーカーのものでも、商品によってインクの種類が違ったり、補充方法が異なる場合がありますので、気を付けてください。
※ネーム印の中には、インク補充できないタイプのものもあります。
なぜ印鑑は朱肉を使うようになったの?
ところで先ほど、「朱色のインクは印鑑の朱肉に似せて作られた」と述べましたが、ではなぜ、印鑑に朱肉が使われるようになったのでしょうか?
朱肉の誕生は今から約2000年前。材料は溶剤と顔料を調合した朱液に、パンヤやモグサなどの繊維質を混ぜて練り上げたもの(練り朱肉)が伝統的です。
この朱肉が赤いのは、古代中国で誕生した当時、鉱物の1つである朱砂(辰砂)を顔料の原材料に用いたからですが、なぜわざわざ赤い顔料を選んだのでしょう。
日本の印肉には黒、褐色、藍などの色がありますが、古代中国では金、銀に次いで貴重な朱砂を高貴な色としていました。
また朱は歳月を経ても変質や変色がないため、永遠の象徴とされ、不老不死の霊薬や遺骸の保存などにも用いられるようになりました。印肉に朱の色が使われているのは、そのような高貴で霊的な意味合いが理由だったと考えられます。
また、朱色が血の色の赤に因縁するという説もあります。
春秋時代の中国では地は神聖なものとして尊ばれ、諸侯の盟約の際にその信の証明として牛などの生け贄の血を飲み合う習慣がありました。
この、血の信義という思想から、印の代わりに血で拇印を捺す血判が生まれ、この地の赤が表す信義、信頼という思いが朱色を支持したとも言われています。
機能もデザインも豊富なネーム印
ここまで、ネーム印のインクの色について、朱色と赤色のどちらが適しているかを紹介しました。
ネーム印を使う際、一般的なのは朱色のインクです。朱肉に似せて作られた色なので、書類などに捺した時、違和感なくなじみますよ。
最近のネーム印は、フタを外さずに片手で捺せるキャップレスタイプや、おしゃれなデザインのものなどバリエーションが豊富です。ぜひ、あなたにピッタリのネーム印を探してみてください!