
「確定申告」とは、1年間の所得を確定した上で所得税額を申告・納税する手続きのことです。1月1日から12月31日までの1年間の所得と、その所得にかかる所得税を計算し、税務署で手続きをおこないます。個人事業主の中には「手続きが面倒だから苦手…」という方もいるかもしれませんね。
会社員やパート、アルバイトの場合、会社が本人に代わって税額の申告と納税をおこないます(年末調整)。そのため自分で手続きをする必要はありませんが、個人がふるさと納税や住宅ローン控除を受ける場合は、自身で確定申告をしなければなりません。
ところで確定申告をおこなう際、印鑑は必要なのでしょうか。行政機関(税務署)での手続き上、なんとなく印鑑は必需品のように思いますが、実際はどうなのでしょうか?
そこでこの記事は「確定申告に印鑑は必要か、不要か」について詳しく解説します。最後までご覧ください。
確定申告の手続きに印鑑は廃止になった?
個人事業主などが確定申告の手続きをおこなう場合、共通して次の書類が必要になります。
・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
・所得を証明できるもの(収支報告書など)
・所得控除や税額控除の適用を証明できるもの
それでは、この手続きに印鑑は要るのでしょうか? 結論から言うと「現在、印鑑は不要」です。
以前は、紙の確定申告書を提出する場合、印鑑を押す必要がありました。署名欄など、書類に印鑑を押すスペースが設けられており、必ず押して提出することが義務付けられていたのです。
※印鑑の代わりに「シャチハタ」を使うのは不可とされていました。
しかし2021年に実施された税制改正により、税務署長等に提出する税務関係書類への押印は廃止となりました。確定申告の手続きもこの中に含まれます。
税制改正の背景には、「e-tax」(国税庁が運営するオンラインサービス)を推進したいという政府のねらいがあります。インターネットを利用した手続きに切り替えることで、時間や手間のコスト削減につながるからです。
国税庁のホームページ「税務署窓口における押印の取扱いについて」は、以下のように記載されています(一部省略)。
「国税に関する法令に基づき税務署長等に提出される申告書等(税務関係書類)については、これまで提出者等の押印をしなければならないこととされていましたが、令和3年度税制改正により(省略)押印を要しないこととされました。」

国税庁「税務署窓口における押印の取扱いについて」
https://www.nta.go.jp/information/other/data/r02/oin/index.htm
2021年4月以降は、税務署に提出する書類への押印義務がなくなりました。「確定申告書」の他にも「給与所得者の扶養控除等申告書」など、あらゆる税務書類がその対象となります。
また、本人の代わりに代理人が書類を提出する場合も、原則として印鑑が不要です。「印鑑を持ってくるのを忘れた」という場合も、窓口で手続きをおこなうことができます。
税務書類の中で印鑑が必要なものは
ただし、例外もあります。
国税庁ホームページには、次の税務関係の手続きの場合、「印鑑が必要」と明記されています。
(1)担保提供関係書類及び物納手続関係書類のうち、実印の押印及び印鑑証明書の添付を求めている書類
(相続税・贈与税の申請に関する「納税保証書」「抵当権設定登記承諾書」「所有権移転登記承諾書」など)
(2)相続税及び贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類(「遺産分割協議書等の写し」)
これらの手続きをおこなう際、押印(実印)と、押した印が実印であるかを示すための印鑑証明書が必要です。税務署に提出する書類はすべて印鑑が不要というわけではないので気を付けましょう。
確定申告で書類に印鑑を押したらどうなる?

確定申告の手続きにおいて、原則印鑑は不要ですが、もし誤って書類に印鑑を押した場合はどうなるのでしょうか?
実は押しても書類が無効になることはありません。
「誤って押してしまった」といって、慌てて修正しなくても大丈夫。そのまま税務署に提出できるのでご安心ください。
また税務署窓口に設置されている様式の中には、すでに押印欄が印刷されたものも含まれていることがありますが、この場合も押印せずに提出できます。
国税庁では、「ホームページに掲載している申告書等の様式については、順次、押印欄の無い様式に更新しています。押印欄のある様式についても、引き続き印刷して御使用いただけますが(省略)押印欄への押印は不要」と説明しています。
ちなみに印鑑の有無によって、書類そのものの効力が変わるわけではありません。「印鑑を押した書類だから申請が下りやすい」ということはないので、知識として覚えておきましょう。
確定申告に印鑑は必要ない
ここまで「確定申告に印鑑は必要か、不要か」について紹介しました。
以前は確定申告の手続きをおこなう際、書類への押印が必要でしたが、法改正により2021年4月から押印が廃止されました。押印欄が残ったままの様式に記入する場合も、印鑑を押す必要はなく手続きが可能です。
ただし、法改正によって確定申告を含む税務書類への押印はなくなりましたが、例外として、「納税保証書」「抵当権設定登記承諾書」「所有権移転登記承諾書」「遺産分割協議書等の写し」などの税務書類には押印(実印)が必要となります。手続きの内容によっては従来通り印鑑が必要なので、気を付けましょう。


