請求書に印鑑は必要か?

「請求書」と言えば、企業間の取引に欠かせない文書の1つです。自社の商品やサービスの対価を取引先に請求する大切な書類であるため、作成の際は注意が必要です。

請求書は、社名や住所と印鑑を押印した書式が一般的です。しかし「印鑑を押さないと請求書としての効力が無い」というわけではありません。なぜ印鑑を押した請求書がビジネスシーンの通例となっているのでしょうか?

そこでこの記事は、請求書に印鑑は必要かどうかについて解説します。
記事では、フリーランスが持つのに最適な印鑑の種類や、請求書への印鑑の押し方についても紹介します。

請求書に印鑑がいる根拠とは

請求書は商品やサービスなどを引き渡し後、入金を依頼するために取引先と合意している締め日に発行します。
実は書面で手続きをする必要はなく、お互いの合意があれば口頭で支払いを依頼することもできます。しかし口頭で済ませると、内容に齟齬が生じてトラブルに発展してしまう、という可能性もあります。

そこで請求書として文書に残すことで、「この金額で請求した」「請求を受けていない」といった食い違いを防ぐことができます。

では、なぜ印鑑を押すのでしょうか。それは書類としての信頼性や信憑性につなげるためです。請求書に印鑑があれば、「その企業や個人事業主が発行したものである」という証拠能力が高まります。また、押印がある請求書は印鑑の複製が難しいため、第三者による書類の改ざんを防ぐ効果も期待できます。

なお、他人を装って請求書を偽造すると、下記の「私文書偽造」の罪に問われます

【第百五十九条】

行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

ここで言う「私文書」とは、公的な立場にない一般の私人が作成した書類で、権利や義務または事実証明に関する文書、または図画のことです。請求書に押印することで偽造に対する抑止力にもなるでしょう。なお、この法律は請求書の他、履歴書、契約書、証明書なども私文書に含まれます。

また、企業によっては業務上、印鑑の押印がない請求書は処理ができない場合もあります。できる限り、押印はしておくのが賢明です。

請求書に押す印鑑の種類は角印が一般的

請求書に印鑑を押す際、どのような形状の印を使えばいいのでしょうか?
これは企業の場合と、フリーランスや個人事業主の場合で、それぞれ異なります。

まず、企業が押印する場合は「角印」を使うのが一般的です。角印とは企業の名前が入った印のことで、会社の認印にあたります。請求書や見積書、発注書などへの押印にも使われています。
角印は朱肉をつけて押すハンコタイプの他、ゴム印タイプや連続で押せる浸透印タイプがあります。毎日多くの請求書を発行する企業の場合、浸透印タイプの角印が便利です。

企業用の印は他にも「代表者印」「銀行印」がありますが、くれぐれも請求書には押さないようにしましょう

請求書で使うフリーランス、個人事業主の印鑑は?

フリーランスや個人事業主が持つ印鑑は、「丸印」「角印」「銀行印」などがあります。

屋号を持つフリーランスや個人事業主の場合、一般的に角印を押します。屋号がない場合は丸印を用います。丸印とは印面の内側の中心に「代表之印」などの文言を、外側には屋号やショップ名を入れたものです。

注意したいのが、プライベートで使用する個人印は使わないこと

プライベート用の認印をそのまま使うのは厳禁です。取引先への信頼性を高めるためにも、ビジネス用の印鑑は別途用意しておくのがベターです。

請求書に印鑑を押す場所はどこが最適?

請求書に印鑑を押す際、どこに押印すればいいのでしょうか。

押印欄がある場合は、欄内に収まるように印鑑を押します。もしも押印欄がない場合は、社名または住所と角印が重なるように押すのが最適です。文字と印影を重ねることで、請求書の偽造がしにくくなります。このとき、社名などの最後の文字が、印の中心に来るように押すとバランスが良くなります。

フリーランスや個人事業主の場合は、事業主名と押印を重ねる必要はなく、氏名や屋号の横に押印するのが一般的と言われています。

押印時は印影がクッキリと鮮明に映るように押しましょう。印影が欠けていたり、かすれていたりすると見栄えが悪いだけでなく、書類としての信頼性も損なわれます

角印の場合、個人用の印鑑と違ってサイズが大きいため、鮮明に押すにはコツが要ります。請求書に対して垂直になるように立てて持ち、印全体が紙に均等に当たるよう垂直に力を加えます。

コツがつかめるまで、試し押ししてから押印するといいですね。

万が一、押印に失敗したときは、請求書を再発行して押し直してください。請求書はお金のやりとりに関わる書類なので、高い信頼性が求められます。請求書は「なるべく訂正印を使用しない」ことが重要です。

請求書の信頼性を高めたいなら印鑑を押そう

ここまで、請求書に印鑑は必要かどうかについて解説しました。

請求書には押印の有無は関係ありませんが、書類としての信頼性や信憑性を高めるために印鑑を押すことが通例となっています。「書類の改ざんや複製がされにくい」という効果も期待できるので、請求書を発行する際は、できる限り押印するようにしましょう。

押印用の印鑑の種類は、企業なら「角印」を、フリーランスや個人事業主なら「丸印」または「角印」を使うのがベターです。もしも書式に押印欄が無いときは、企業の場合、社名または住所と角印が重なるように押します。書類の改ざん防止につながるのでビジネスマナーとして覚えておきましょう。