
ビジネスの現場でよく使われる「見積書」。
商品やサービスの購入を検討している相手(発注者)に対し、契約の前段階で発行する書類のことです。見積書には印鑑が押されているものをよく見かけます。
印鑑があると見積書としての効力があるのだろう、と思いがちですが、実はこの印鑑には法律的な効力がありません。押しても押さなくてもどちらでもいいのです。
それではなぜ印鑑を押した見積書が存在するのでしょうか? 押印を省けば、見積書の作成も早く済みそうですが…。
そこでこの記事は、見積書に印鑑は必要かどうかについて解説します。記事では、押印に適した印鑑の種類や、書類に押す位置についてもまとめています。
見積書に押した印鑑の有効性は?本当にいるの?
見積書はあくまでも取引の締結可否を決めるものです。正式に発注が決まった場合に発行する書類ではありません。
商品やサービスの価格を提示する種類として発行するものであって、その様式や印鑑の有無で見積書の効力は変わりません。つまり印鑑は「書面に無くてもいい」のです。とはいえ、世の中には印を押した見積書がよく見られます。一体なぜでしょうか?
その理由は、信頼感を相手(発注者)に与えるためです。
彼らは、見積書の内容をもとに発注するかどうかを判断します。その見積書に押印があることで、「提案先の会社が認めた正式な書類である」という印象を相手に与えることができ、信頼感が増します。
また、企業によっては社内での稟議、上司や経営者の決裁も必要です。見積書に印鑑があれば、正式な文書として「稟議が通りやすくなる」という効果が期待できるかもしれません。こうした理由から、見積書に印鑑を押しているケースが多いと考えられます。
ところで、見積書は企業間で必ず発行するものではありませんが、建設工事の見積りについては、法律で次のように定められています。

【建設業法第20条(建設工事の見積り等)】
第1項:建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際して、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、
労務費その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにして、建設工事の見積りを行うよう努めなければならない。
第2項:建設業者は、建設工事の注文者から請求があったときは、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書を交付しなければならない。
このように、建設工事の請負契約を締結する前には、適正な見積書の提出が求められているのです。
見積書用の印鑑の大きさや種類は?シャチハタはOK?
見積書に押印する場合、印鑑に適した大きさや種類はあるのでしょうか?

見積書は会社が発行する書類であるため、会社の印鑑である「角印」を押すのが一般的です。
角印とは印面が四角い形状の印で、「◎◎◎◎株式会社之印」などの社名が印面に彫刻されています。代表者印と違って正式に届け出が必要なものではないため、会社の認印という位置づけです。
角印は見積書の他、領収書や発注書などにも用いられます。サイズに決まりはありませんが、印面の大きさは18mm、21mm、24mm、27mmのサイズが一般的です。
材質は、木質系の「薩摩本柘(さつまほんつげ)」や「彩樺(さいか)」、牛の角部分を用いた「黒水牛」など様々な種類があります。
一方で、法人用の印鑑として知られる代表者印は、契約書など企業として正式に作成、発行した文書に押す場合に使います。見積書用の印鑑としては適切ではありません。法人用の銀行印も法人口座に関する手続きや手形の発行時に使うもので、代表者印と同様、見積書に押すのは控えましょう。
また、角印に加えて「担当者印」も見積書に押すと、正式な文書としての信頼感が高まります。担当者印とは、会社で使用する認印のことです。誰がその見積書を発行したかを明らかにする目的で押印します。
認印の一般的なサイズは、印面の直径が10.5mm、12mm、13.5mmのもので、材質は「薩摩本柘」や「黒檀(こくたん)」「彩樺」など様々あります。
認印の代わりに「シャチハタ」を印鑑として使うことも可能です。「シャチハタ」は本体にインクが含浸されたスタンプで、「浸透印」とも呼ばれます。
見積書に印鑑を押す位置に決まりがある
見積書に角印を押印する場合、押す位置にも注意が必要です。押印欄がある場合は、欄内に収まるように角印を押します。もし無ければ、社名または住所の右隣に押印します。
このとき、文字に角印が少し重なるぐらいに押印するのがコツです。文字に印影を重ねることで、印鑑の複写や領収書の改ざんを防止できます。
もし、見積書で書き間違いをした場合、二重線を引いてその上から訂正印を押す方法がありますが、できるだけ再発行をしましょう。見積書はビジネスの過程で交わされる書類です。訂正印を使うよりも新しく発行した方が、相手の書類に対する印象も変わるはずです。
見積書に印鑑を押すなら角印と担当者印が効果的
ここまで、見積書に印鑑は必要かどうかについて解説しました。印鑑の有無で見積書の効力が変わることはありませんが、ビジネスの現場では印鑑を押すようにしましょう。押印することで、「正式な文書」として信頼感を相手に与えることができます。

使用する印鑑は会社の角印です。角印に加えて担当者個人の認印も押すと、文書としてより効果的です。
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